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東京地方裁判所 昭和48年(ワ)6041号 判決 1975年9月08日

原告 株式会社加藤商店

右代表者代表取締役 加藤敬

<ほか七名>

右原告八名訴訟代理人弁護士 池内三郎

被告 新進興業株式会社

右代表者代表取締役 中村進一

右訴訟代理人弁護士 平井博也

同 柴田徹男

同 酒井憲郎

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(一)  被告は、原告株式会社加藤商店に対し、金二九六万九、七五〇円及びこれに対する昭和四八年八月一〇日から完済まで年六分の金員を支払え。

(二)  被告は、原告林昭光に対し金四一万九、二五五円、原告林朋子に対し金二万七、一九五円、原告林雄一に対し金六万二、〇〇〇円、原告榎本竹雄に対し金六万七、五〇〇円、原告川瀬安信に対し金三五万七、九五〇円、原告黒滝光蔵に対し金三〇万三、四五〇円及び右各金額に対する昭和四八年八月一〇日から完済まで年五分の金員を支払え。

(三)  被告は、原告大山廣人に対し、金二六〇万八、二九〇円及びこれに対する昭和四八年八月一〇日から完済まで年六分の金員を支払え。

(四)  訴訟費用は、被告の負担とする。

(五)  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  原告株式会社加藤商店(以下「原告加藤商店」という。)について、

(1) 同原告は、建設機械の賃貸などを目的とする株式会社であり、被告は、土木建築請負などを目的とする株式会社である。

(2) 同原告は、昭和四八年一月二五日頃、被告の代理人である訴外佐藤英夫との間に、大要、左記のような内容の契約を締結した。

(イ) 同原告は、被告に対し、被告が訴外東京都から請け負った東京都練馬区豊玉上一丁目先二四個所の水道配水小管新設工事(以下「本件工事」という。)施行のため、別表第一(一)記載の建設機械類を同記載の賃料で、賃貸すること

(ロ) 同原告は、被告に対し、本件工事の残土の処理を代金は運搬車一台一回当り金一、五〇〇円の約定で、請け負うこと

(ハ) 同原告は、被告に対し、玉石を代金は一立方米当り金二、五〇〇円の約定で、売り渡すこと

(ニ) 右(イ)ないし(ハ)の各賃料及び代金は、毎月二〇日締切、翌月二〇日払とすること

(3) 同原告は、右(2)の契約に基き、昭和四八年一月二九日から同年五月二〇日までの間、被告に対し、別表第一(二)記載のとおり、建設機械類を賃貸し、残土の処理をし、かつ、玉石を売り渡したので、右賃料、代金などの合計額は、金二九六万九、七五〇円となる。

(4) よって、同原告は、被告に対し、右賃料、代金など合計金二九六万九、七五〇円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四八年八月一〇日から完済まで商法所定の年六分の遅延損害金の支払を求める。

(二)  原告林三名、同榎本、同川瀬、同黒滝について、

(1) 右原告ら六名は、いずれも昭和四八年二月初旬、被告の代理人である佐藤英夫との間で、被告は、別表第二(一)記載のとおり、右原告らを本件工事の労務者として、雇用する旨の契約を締結した。

(2) 右原告らは、別表第二(二)記載のとおり、昭和四八年二月から同年五月までの間、就労したが、同記載のとおりの賃金債権が残存する。

(3) よって、右原告らは、被告に対し、別表第二(二)記載の賃金残金及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四八年八月一〇日から完済まで民法所定の年五分の遅延損害金の支払を求める。

(三)  原告大山について、

(1) 同原告は、建材類の販売を業とする者であり、被告は、前述のとおり、土木建築請負を目的とする株式会社である。

(2) 同原告は、昭和四八年一月三一日、被告に対し、佐藤英夫を介して、別表第三(一)記載の建材類を代金は同記載の約定で、継続して売り渡す旨の契約を締結した。

(3) 同原告は、右契約に基き、昭和四八年一月三一日から同年四月二一日までの間、被告に対し、別表第三(二)記載のとおり、代金合計金五三六万八、二九〇円に相当する建材類を売り渡した。

(4) よって、同原告は、被告に対し、右代金五三六万八、二九〇円から被告が支払を了した金二七六万円を控除した残金二六〇万八、二九〇円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四八年八月一〇日から完済まで商法所定の年六分の遅延損害金の支払を求める。

(四)  原告大山を除くその余の原告らについて、

仮に佐藤英夫が右(一)の(2)、(二)の(1)の各契約を締結するについて、被告を代理する権限がなかったとしても、被告は、昭和四八年一月、佐藤を本件工事の現場代理人に選任し、同月一〇日、東京都水道局長に対し、佐藤が被告の従業員であると称して、同人を右現場代理人と定めた旨の届出をし、また、その頃、本件工事現場に設置した看板にも本件工事の現場責任者が同人である旨を表示し、さらに、その頃、同人に対し、被告工事部の肩書を付した同人の名刺を作成交付し、同人をして、右名刺を広く取引関係者に手交させており、同人も右原告らに対し、同人が本件工事の現場代理人であり、その旨の届出が東京都になされていると申し向け、右名刺を交付したのである。被告の右所為は、佐藤に対して、右原告らとの間の本件各契約を締結するについての一切の代理権を与えた旨を右原告らのように同人と取引をしようとする者に表示したことになる。

また、佐藤は、被告から、前述のとおり、本件工事の現場代理人として、本件工事に関する行為をするについて、代理権を付与されていたから、右原告らとの間の本件各契約締結行為は、その代理権を越えてなされたものであり、しかも、前段記載の事情からすれば、右原告らは、佐藤が右各契約締結の代理権を有していたと信ずるについて、正当な理由がある。

したがって、被告は、民法第一〇九条又は同法第一一〇条により、佐藤の行為について、その責に任ずべきである。

(五)  原告加藤商店について、

仮に右主張が理由がないとしても、被告の代理人である被告専務取締役訴外中村誉至雄は、昭和四八年四月末頃、同原告代表者に対し、同原告と佐藤英夫との間の右(一)の(2)の契約を追認した。すなわち、同原告代表者は、同年四月頃から被告に対し、本件建設機械類の賃料の支払を請求していたところ、同年四月末頃、中村は、同原告代表者に対し、東京都からの請負代金の入金次第、右賃料を支払うから、建設機械類の賃貸を減少させないで貰いたい旨を述べた。

したがって、佐藤の右契約についての代理権限の欠缺は、補正されたから、右契約の効果は、被告に帰属するものである。

≪以下事実省略≫

理由

一  まず、原告加藤商店の請求について、判断する。

(一)  請求原因(一)の(1)の事実及び(2)の事実のうち、被告が東京都から本件工事を請け負ったことは、当事者間に争いがない。

(二)  次に、≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤英夫が、真実、被告を代理する権限を有していたかどうかはさておき、原告加藤商店は、昭和四八年一月二八日頃、被告の現場代理人と称する佐藤との間で、請求原因(一)の(2)、(イ)ないし(ニ)の各約定を内容とする契約を締結したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(三)  ところで、原告加藤商店は、佐藤が右契約について、被告を代理する権限を有していた旨主張するが、これにそう≪証拠省略≫は、後記各証拠に対比して、たやすく信用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

かえって、≪証拠省略≫を総合すれば、被告は、昭和四七年一二月二五日頃、東京都から本件工事を工事代金二、九一〇万円の約定で、請け負ったが、昭和四八年一月七日頃、土木建築請負などを目的とする富岡建設に対し、右工事の大部分を工事代金二、六二〇万円の約定で、下請け負わせたこと、次いで、富岡建設は、昭和四八年一月中、佐藤英夫に対し、右下請工事を工事代金二、五〇〇万円(その後金二、三〇〇万円と改定した。)の約定で、さらに下請け負わせたこと、佐藤は、もと富岡建設の取締役に就任したことがあったが、昭和四七年当時は佐藤組と称し、独立して、土木建築業を営み、富岡建設などの下請負工事を施行しており、他方、原告加藤商店は、土木建築、建設機械の賃貸などを目的とし、佐藤の下請負業者であったところ、佐藤は、昭和四八年一月二八日頃、同原告との間で右(二)の契約を締結したこと、ところで、被告は、佐藤に対し、右契約について、被告を代理する権限を付与した事実がなく、右契約は、被告の全く関知しないものであったことが認められる。

もっとも、被告が昭和四八年一月、佐藤を本件工事の現場代理人に選任し、同月一〇日、東京都水道局長に対し、佐藤が被告の従業員であるとして、同人を右現場代理人と定めた旨の届出をしたこと、被告は、その頃、本件工事現場に設置した看板にも本件工事の現場責任者が同人である旨を表示したこと、被告がその頃、同人に対し、被告工事部の肩書を付した同人の名刺を作成交付したことは、当事者間に争いがない。しかし、他面、≪証拠省略≫を総合すれば、右現場代理人は、被告の東京都に対する本件工事請負契約の履行に関し、工事現場に常駐し、東京都との間で右工事の履行に関する折衝を行い、また、工事の施行上必要な労務管理、工程管理、安全管理、その他の管理行為など工事の運営取締を行う権限を有するが、右契約を変更、解除することはもとより、第三者との間で契約を締結することに関し、被告を代理する権限を有しないこと、また、被告は、真実、佐藤を雇用した事実がなく、ただ、右現場代理人選任届出の便宜上、右届出書に添付された同人の経歴書に同人が昭和四五年八月、被告に雇用された旨の記載をしたにすぎず、さらに、佐藤を右現場代理人に選任した関係上、東京都に対する関係においてのみ、使用するものとして、右名刺を同人に交付していたことが認められるから、右当事者間に争いのない事実をもって、前段に認定したところをくつがえすに足りるものとは思料できず、他にこれを左右できる証拠はない。したがって、原告加藤商店の右主張は、理由がない。

(四)  次に、原告加藤商店は、佐藤英夫が被告の表見代理人である旨主張するので、検討するのに、すでに右(三)に判示したとおり、被告は、昭和四八年一月、佐藤を本件工事の現場代理人に選任し、同月一〇日、東京都水道局長に対し、その旨の届出をし、その頃、本件工事現場に設置した看板にも本件工事の現場責任者が同人である旨を表示し、かつ、その頃、同人に対し、被告工事部の肩書を付した同人の名刺を作成交付したものであり、また、同人は、現場代理人として、前述のように被告を代理する権限を有するものであった。

そして、≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤は、原告加藤商店代表者に対し、同人が本件工事の現場代理人であると言明して、行動し、右名刺を交付していたこと、同原告代表者は、佐藤が被告を代理して、右(二)の契約を締結する権限があると信じて、右契約を締結したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

以上の事実によれば、佐藤が原告加藤商店との間で右(二)の契約を締結した行為は、その代理権限を越えてなされたものであり、また、被告は、佐藤に対し、現場代理人としての権限を付与した旨の表示を一般第三者に対してしたものというべきである。

そこで、被告の抗弁について、検討するのに、≪証拠省略≫を総合すれば、原告加藤商店代表者は、佐藤との間で右(二)の契約を締結した際、同人が本件工事の現場代理人にすぎないことを知りながら、右契約の成立前、被告に対し、問い合せることなどは全くしなかったことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、原告加藤商店は、右契約の締結に関し、佐藤に被告を代理する権限があったと信ずるについて、過失があったものというべきである。したがって、被告の抗弁は、理由があり、原告加藤商店の右主張は、理由がない。

(五)  次に、原告加藤商店は、被告の代理人中村誉至雄が昭和四八年四月末頃、同原告と佐藤英夫との間の右(二)の契約を追認した旨主張するが、これにそう≪証拠省略≫は、後記各証拠に対比して、たやすく信用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

かえって、≪証拠省略≫を総合すれば、原告加藤商店代表者は、昭和四八年四月下旬頃、佐藤から右契約に基く賃料、代金の支払を受けられなかったため、その頃、被告専務取締役である中村に対し、右事情を述べたところ、中村は、元請負人である被告としても、東京都との間で請負代金の折衝をしているので、同原告は佐藤と協議して善処されたい旨を述べたこと、さらに、同原告代表者は、同年五月一〇日頃、中村に対し、被告が、直接、右賃料、代金を支払って貰いたい旨を要求したが、これに対し、中村は、元請負人である被告としては、下請負人である佐藤の債務については、支払に応じられない旨を答えたことが認められる。したがって、原告加藤商店の右主張は、理由がない。

(六)  してみれば、原告加藤商店の右(三)ないし(五)の各主張事実の存在を前提とする同原告の被告に対する本訴請求は、その余の点について、判断するまでもなく、失当である。

二  次に、原告林三名、同榎本、同川瀬、同黒滝の請求について、判断する。

(一)  ≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤英夫が、真実、被告を代理する権限を有していたかどうかはさておき、同人が昭和四八年二月初旬、被告の現場代理人と称して、右原告らを本件工事の労務者として、雇用する旨の契約を締結したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(二)  ところで、右原告らは、佐藤が右契約について、被告を代理する権限を有していた旨主張するが、これにそう≪証拠省略≫は、後記各証拠に対比して、たやすく信用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

かえって、佐藤の現場代理人としての権限は、右一の(三)に判示したとおりであって、同人が現場代理人であることをもって、直ちに被告を代理して、右原告らを雇用する権限を有するものといえないことは明らかであり、また、すでに右一の(三)に判示したところと≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤は、前述のとおり、富岡建設から本件工事の大部分を下請け負ったものであり、右下請負工事施行のため、昭和四八年二月初旬、右原告らを雇用する旨の契約を締結したこと、ところで、被告は、佐藤に対し、右契約について、被告を代理する権限を付与した事実がなく、右契約は、被告の全く関知しないものであることが認められる。

もっとも、≪証拠省略≫を総合すれば、被告は、昭和四八年一月、原告林雄一を本件工事の主任技術者に選任し、同月一〇日、東京都に対し、同原告が被告の従業員であるとして、同原告を右主任技術者と定めた旨の届出をしたことが認められる。しかし、他面、≪証拠省略≫を総合すれば、被告は、真実、原告林雄一を雇用した事実がなく、ただ、右主任技術者選任届出の便宜上、右届出書に添付した同原告の経歴書に同原告が昭和四〇年三月、被告に雇用された旨の記載をしたにすぎないことが認められるから、右認定の事実をもって、前段に認定したところをくつがえすに足りるものとは思料できず、他にこれを左右できる証拠はない。したがって、右原告らの右主張は、理由がない。

(三)  次に、右原告らは、佐藤英夫が被告の表見代理人である旨主張するので、検討するのに、被告が昭和四八年一月、同人を本件工事の現場代理人に選任し、同月一〇日、東京都水道局長に対し、その旨の届出をし、その頃、本件工事現場に設置した看板にも本件工事の現場責任者が同人である旨を表示し、その頃、同人に対し、被告工事部の肩書を付した同人の名刺を作成交付したことは、当事者間に争いがない。また、右一の(三)に判示したとおり、同人は、現場代理人として、被告を代理する権限を有するものであった。

そして、≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤は、右原告らに対し、同人が本件工事の現場代理人であると言明して、行動し、右名刺を交付していたこと、右原告らは、佐藤が被告を代理して、右(一)の契約を締結する権限があると信じて、右契約を締結したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

以上の事実によれば、佐藤が右原告らとの間で右(一)の契約を締結した行為は、その代理権を越えてなされたものであり、また、被告は、佐藤に対し、現場代理人としての権限を付与した旨の表示を一般第三者に対してしたものというべきである。

そこで、被告の抗弁について、検討するのに、≪証拠省略≫を総合すれば、右原告らは、佐藤との間で右(一)の契約を締結した際、同人が本件工事の現場代理人にすぎないことを知りながら、右契約の成立前、被告に対し、問い合せることなどは全くしなかったことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、右原告らは、右契約の締結に関し、佐藤に被告を代理する権限があると信ずるについて、過失があるものというべきである。したがって、被告の抗弁は、理由があり、右原告らの右主張は、理由がない。

(四)  してみれば、右原告らの右(二)、(三)の各主張事実の存在を前提とする右原告らの被告に対する本訴請求は、その余の点について、判断するまでもなく、失当である。

三  次に、原告大山の請求について、判断する。

(一)  請求原因(三)の(1)の事実は、当事者間に争いがない。

(二)  原告大山は、昭和四八年一月三一日、被告に対し、佐藤英夫を介して、別表第三(一)記載の建材類を継続して売り渡す旨の契約を締結した旨主張するが、これにそう≪証拠省略≫は、後記各証拠に対比して、たやすく信用できず、≪証拠省略≫によっても明らかなように、同原告において、一方的に作成したもので、的確な証拠ということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はなく、かえって、≪証拠省略≫を総合すれば、佐藤英夫は、富岡建設から本件工事の大部分を下請け負ったものであり、右下請負工事施行のため、昭和四八年一月三一日頃、原告大山から、自己のため、右建材類を買い受ける旨の契約を締結したこと、右契約は、被告の全く関知しないものであることが認められる。

もっとも、≪証拠省略≫を総合すれば、被告は、原告大山に対し、昭和四八年三月二〇日頃、金額金一〇〇万円、同年五月中、金額金一七六万円の被告振出の小切手各一通を交付し、右各小切手金を支払ったこと、しかし、これは、被告が下請負人である富岡建設及び佐藤英夫との間の合意により、被告が同会社に対して支払うべき下請負代金のうち金二七六万円について、被告が同原告に対して、直接、これを支払って、右債務を清算したこと、また、同原告は、その後同年六月七日頃、被告に対し、直接、佐藤との間の右売買契約に基く代金約金二六〇万円の支払の請求をしたことがあったが、これに対し、被告側は、同原告がその支払を受けられないことにより、倒産のおそれがあるときは、被告の富岡建設に対する下請負代金債務の存在を考慮し、金一〇〇万円ないし金一五〇万円程度の立替払を検討してもよい旨を答えたことが認められるが、右認定の事実をもって、前段に認定したところをくつがえすに足りるものとは思料できず、他にこれを左右できる証拠はない。したがって、原告大山の右主張は、理由がない。

(三)  してみれば、原告大山の右主張事実の存在を前提とする同原告の被告に対する本訴請求は、その余の点について、判断するまでもなく、失当である。

四  以上の次第であるから、原告らの本訴請求は、いずれも棄却されるべきであるから、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり、判決する。

(裁判官 佐藤栄一)

<以下省略>

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